キネレット(アナキンラ)と妊娠
2010.09.18.07:20
アナキンラはIL-1受容体拮抗薬で、中等度から重症の関節リウマチの患者さんに使われている。
ラットとウサギで生殖試験が行われた。(体重換算で)ヒトが使う100倍の量でも繁殖力を損なったり、胎児に害を与える証拠は観察されなかった。動物発ガン実験は、アナキンラでは行われていないが、in vitroそしてin vivoでは変異誘発性はなかった。(1)
上皮細胞膜の形質転換を直接阻害することにより、胎児着床不全を起こすことがマウスで示された。(2, 3) 胎児はマウスに戻すと形態学的には正常で、生育可能であった。(3)
アナキンラはウサギ胎盤を通過する。(4)帝王切開で取り出した胎盤を使って組み換えIL-1受容体拮抗薬が胎盤を通過するかどうか実験された。母体から胎児そして胎児から母体のどちらの方向も方向にも移動が見られた。(5)
要約:胎芽/胎児に与える危険性を評価するデータはないが、IL-1受容体拮抗薬は、妊婦の免疫反応機構から胎芽/胎児を守る役割を担っている自然に出てくるサイトカインである。それゆえ、組み換え推奨容量のIL-1受容体拮抗薬が胎芽あるいは胎児に直接的に害を及ぼすかどうかは疑わしい。ヒト妊婦のデータが出るまで、もっとも安全な方法は、妊娠期間はアナキンラを避けることである。計画されたあるいは偶然の妊娠でのアナキンラの使用は胎芽そして胎児に低い危険性を示すようである。
参考文献
1. Product information. Kineret. Amgen, 2004
2. Simon C, Frances A, Piquette GN, El Danasouri I, Zurawski G, Dang W, Polan LM. Embryonic implantation in mice is blocked by interleukin-1 receptor antagonist. Endocrinology 1994; 134: 521-528
3. Simon C, Valbuena D, Krussel J, Bernal A, Murphy CR, Shaw T, Pellicer A, Polan LM. Interleukin-1 receptor antagonist prevents embryonic implantation by a direct effect on the endometrial epithelium. Fertil Steril 1998; 70: 896-906
4. McDuffie RS Jr., Davies JK, Leslie KK, Lee S, Sherman MP, Gibbs RS. A randomized controlled trial of inkerleukin-1 receptor antagonist in a rabbit model of ascending infection in pregnancy. Infect Dis Obstet Gynecol 2001; 9; 233-237
5. Zaretsky MV, Alexander JM, Byrd W, Bawdon RE. Transfer of inflammatory cytokines across the placenta. Obstet Gynecol 2004; 103: 546-550
-Gerald G. Briggs, Roger K. Freeman, Sumner J. Yaffe. ANAKINRA, pp101-102 Drugs in pregnancy and lactation: a reference guide to fetal and neonatal risk.(2010年9月17日にアクセス)
生物学的製剤はもともと生体内で作られている蛋白質なので、非ステロイド性消炎鎮痛薬や抗リウマチ薬に比べると、妊娠における危険性は低いということでしょうか。それでも、きちんとしたヒトでのデータが揃うことに期待したいです
